終活
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近年、高齢化社会の訪れとともに、孤独死やそれに伴う諸問題が発生しつつあります。
多くの方にとっては無縁のお話であると思うのですが、その紹介と対策は重要なことであると判断し、
コンテンツを設けさせていただきました。
なお、3つの紹介事例については故人の名誉や故人の特定防止に配慮し、
一部改変を施していることを申し添えさせていただきます。
事例1:Kさん(仮名)のお話
独身だったKさんはしばしば体調を崩されることがあり、地方自治体のケアを受けておられたそうです。とはいえ、お亡くなりになる4年ほど前には回忌もお勤めされ、その後も何度か様子のお便りもいただいておりました。
しかし、ある日、Kさんが入居していた部屋を管理している会社の担当者から、「Kさんがお亡くなりになった」との連絡を受けました。Kさんにはご親族がおらず、荷物の引き取り手を見つけることができなくて困っていたところ、部屋に置いてあった当山からの封筒を目にした担当者は「残されている位牌だけでも供養してもらえないか」ということで、藁にもすがる気持ちで電話をくれたそうです。
この電話を受けた当山は、スペースは有限なので永久にとはいえませんが、ひとまず位牌(御兄様のものでした)を引取り、位牌堂に安置いたしました。その際、可能な範囲で管理会社の担当者に話を聞いたところ、Kさんが亡くなっていたのは数か月前で、LINEの返信がないことを気にしたKさんのご友人が問い合わせをしたことによって判明したそうです。その後、Kさんにはご親族がいないため、市がKさんの葬儀を行い、埋葬も済まされたとのことでした。
当山は、せめて過去帳に記載するためにKさんの没年月日などが分かればと思い、市へ問い合わせをしましたが、「故人であっても一切の個人情報はお答えできません」と回答され、お亡くなりになったときのKさんの年齢や戒名の有無、どのような葬儀を行ったか、どこにどのような形で埋葬されたか、一切知ることができませんでした。
当山にあるKさんのご先祖の墓所も継ぐ方がいなくなってしまったため、ご供養のためにはいずれ魂抜きの上、無縁墓所への改葬を行う必要があります。もっとも、それがKさんのご希望に添っているのかどうかを確認することはできませんし、なにより一人だけどこか別のところで、どう供養をされているかもわからない状況というのは辛い話です。
事例2:Sさん(仮名)のお話
元々ご親族の墓所があるため、当山に墓所を確保していたSさんは、少々お住まいが遠いこともあり、お供えなどを定期的に送っていただいておりました。もっとも、数年前から音信不通の状況となり、当山からお知らせを送り続けてもご返信いただけず,ある時から不着となってしまいました。
そこで、Sさんの状況を確認するために、当山がご親族の方に伺ったところ、元々そこまで連絡は密ではなかったようで、Sさんから「引っ越した」、「施設に入った」などの知らせを受けたことはないとのことでした。当山は、可能であれば今後のご意向などについてSさんに確認していただくよう依頼はしたものの、親族の方もいまだに連絡はつかず、自治体や医療機関などからの相談や確認もないようです。
郵便物が不着になった時点でお亡くなりになられている可能性もありますし、その後の処理等も済んでいるかもしれません。独身の方の場合には、事例①のように管理会社が荷物等の引き取り手を探すケースもある一方で、調査・確認不十分なまま特殊清掃を入れてしまうこともあり得るようです。
Sさんのご自宅には位牌や仏壇もあったと思いますが、魂抜きや預かりなどの処置を施されないままに粗大・可燃ゴミとして出されてしまった可能性を否定できず,心苦しく思います。
事例3:Nさん(仮名)の場合
Nさんはご親族とあまり仲が良くなかったため、しばらくの間、音信不通の状況になっていることに誰も気づかなかったようです。その結果、Nさんがお亡くなりになっていたことに気づいたのは死後半年以上経過してからのことでした。
その後、警察の調査などが入り、事件性はなかったものの、ご供養に至るまでにはかなりの時間を要しました。ただ、当山は、Nさんのご意向を生前に確認しており、その際に回向料も納めていただいていましたので、葬儀と兼ねた納骨前の法要を行い、Nさんを一族の墓所へ埋葬しました。
しかし、その墓所も直系の跡継ぎの方がおられませんので、いずれは合葬塔への改葬を行うことになると思います。一応、Nさんの生前のご要望には合った形にはなっていますが、墓所の魂抜き及び合葬塔への改装をご親族の立ち合いなどがないまま行うことは避けたいところです。
加齢やご病気などで動けなくなったり、判断ができなくなってしまう前に、葬儀や墓所などについて当山にご相談ください。
墓所について
後継が絶えてしまった墓所につきましては、破損や倒壊などが起こった場合に周囲へ被害が及ぶことを防ぐために、そのままにしておくことはできません。また、以後のご供養を受けられないのも心苦しいところです。
そのため、体力や思考力の衰えなどが著しく、継続してのご供養が難しいとご判断された場合には、あらかじめ下記のような形で、今後についてご検討ください。
①墓所を守る方(守る意思のある方)がおられない場合
墓所の魂抜きをした上で、合葬塔か無縁墓所への改葬を推奨いたします。お亡くなりになられた後に墓所をずっとそのままにしておくことは、破損・劣化などによる危険防止の観点から難しいですし、一切のご供養がなされないという問題もあります。しかし、合葬塔または無縁墓所でしたら合祀の霊位ということで、施餓鬼や盂蘭盆会などにおいて継続したご供養が可能となります。
②墓所を一定期間守る方がおられる場合
一定の回忌までお勤めの後、上記①のように改葬を推奨いたします。世代を越えての永続的なご供養は費用負担の側面などから容易ではないと思います。
③墓所を継続して使用したいご親族がおられる場合
御息女の嫁ぎ先などで墓所を継続してご使用される場合、竿石(「○○家」と刻印が施されている正面部分)を変える方が多いですが、そのままご使用されるケースもあります。いずれにせよ、その際には墓所に合祀され、使用する家と合同で供養が続くという形になります。
お仏壇・お位牌について
お仏壇は中の仏様(掛け軸)や付属の仏具とともに魂抜きの上、お焚き上げいたします。お位牌や過去帳は永続的というわけにはいきませんが、相当な期間,本堂の位牌堂でお預かりした上で、お焚き上げいたします。
一人になって個人用の部屋にお引っ越しされた場合などに、「仏壇を置くスペースがない」というご相談を受けることが度々あります。このような場合には、複数のお位牌を「〇〇家先祖代々」のようにまとめるか、過去帳のみにしてお仏壇や古いお位牌をお焚き上げすることが多いです。
また、上記以外の仏画、遺影などについてもお焚き上げを承っております。そのまま捨ててしまうことに抵抗があるもの(故人のゆかりの品を含む)に関する対応については当山にご相談ください。
生前戒名について
「万一の際に備えて、生きている間に確認したい」などのご意向により、生前戒名を希望される方が増えています。当山は、生前戒名を基本的に承っておりますので、お気軽にご相談ください。なお、あらかじめ生前戒名を墓石等に彫られる方もおられますが、その場合は赤字にしておき、納骨の際に白字にします。
葬儀について
当山は、葬儀・埋葬の詳細について随時相談を受け付けておりますので、ご要望をお伝えください。可能な限りご要望に沿った対応をさせていただきます。
また、ご要望をご親族(相続人)の方に明確に伝えるという観点から、遺言書を残しておくことも積極的にご検討ください。ただし、遺言書において、葬儀を行う人(祭祀財産承継者)を指定し、葬儀を実施することを希望する旨記載しても、法律的な強制力はありません(祭祀をなす義務を負わせるものではありません)。また、遺言書の保管場所を明確にしておかないと、お亡くなりになった直後に遺言書が発見されず、ご希望どおりに供養などが行われないという事態も想定されます。
そのため、お亡くなりになった後に役所への届け出,葬儀・火葬・納骨等の葬送、その他の必要な諸手続(お住まいの明渡し、遺品の整理など)を他者に委託する「死後事務委任契約」を活用することもご検討ください。
遺言作成や遺言執行者について
信頼できるご親族(直系のご親族に限りません)やご友人がおられる場合には、生前にお願いしておけば葬儀などを円滑に執り行ってもらえる可能性が高いと思います。実際、当山でも、甥御様などが葬儀・回忌をしっかりお勤めされているケースをよく目にします。
一方、信頼できるご親族やご友人がおられない場合やご親族・ご友人と疎遠になっておられる場合には、事例①のようにお亡くなりになった事実をご親族や当山が速やかに知ることができず、その結果、故人が意図せぬ方式で火葬や納骨がなされてしまう事態が起こり得ます。このような事態が生じますと、当山としましても非常に心苦しく思いますので、社会的な孤立を防ぐために、地域のコミュニティへ参加して「人とのつながり」を持つように心掛けてください。また、生前に弁護士や司法書士などに相談して遺言書を作成したり,死後事務委任契約を締結したりしておくことが重要と思われます。
なお、当山の顧問弁護士をお願いしている弁護士法人琥珀法律事務所(電話番号:03-3442-5890)は、遺言書の作成依頼や相続のご相談を受けつけているそうですので、ご不安な方やお困りの方はお気軽に問い合わせてみてください。お問い合わせの際に、当山(願生寺)の紹介とお伝えいただくとスムーズに話ができると思います。