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【連載】檀家信徒の皆様へ近況報告と法話 第60回
2024.11.01
ようやく夏が終わった感のある11月です。
従来は古い塔婆処理などを行っておりましたが、暑さのせいでなかなか作業が進みませんでした。
また、行事も増えたため11月後半というのが定例となりそうですが、ちょうど良い気候というのがそのあたりになりそうというのも環境の変化を感じます。
少々気が早い話ですが、1年の終わりというと大掃除があります。
私共も例年12月はバタバタと清掃をこなしておりましたが、どうにも周囲の寺院の様子を見るとそこまで追い詰まった感じではない。
余程手際が悪いのかと不安になったので色々と聞いてみると、11月の十夜に際して少々前倒しで大掃除をしてしまい、12月は残りを少し、といった感じのようです。
これまで当山では秋冬の行事がなかったためまさにコロンブスの卵でした、本年から取り入れようかと考えております。
地蔵堂清掃や餅の用意など、他寺院ではやっていないようなこともあるため、12月に残る部分はありますが、本堂や客間は11月の十夜放生会の前後で完了とする予定です。
墓所清掃などは年末年始のお参りに際して綺麗な状態でお迎えできるようにはします。
冒頭の塔婆処理もその時までには済ませておきます。
さて、先にもありましたが11月というと、昨年から当山は十夜放生会です。
11月17日ということで、施餓鬼の5月17日からちょうど半年毎に大きな法要がある、という形になりました。
そのようななわけで、本年も改めて生きものへの感謝の気持ちを持ちつつ、法要お勤めできればと思う次第です。
放生という行為については殺生を戒める、あらゆる生物には仏性(仏になる素質)があるため慈しむ、他の命により生かされていることに感謝する、様々な感じ取り方があると思います。
どのような内容であれ、何かひとつ心に持ってご参加いただければと思います。
そんな生きものに関する話ですが、仏教では多く聞くことと思います。
皆様は何を思い浮かべるでしょうか。
私が最近思い浮かべたのは芥川龍之介の『蜘蛛の糸』だったりします。
これは『ジャータカ』などにあるものではなく後世の創作的な仏教説話ではありますが、おそらくもっとも広く知られているもののひとつではないでしょうか。
その理由としては、先月のこの月一法話を書いているとき、翌日に8月末に受けた社労士試験の合格発表を控えておりました。
自己採点では合格ラインに達していたものの、1科目だけ足切りラインギリギリのものがあり、マークミスなどで万一があったら、と不安を抱えている状況でした。
一方で、本年の試験はかなり難化していたようで、SNSなどを見ると救済措置があることを祈る声が多く見られました。
私は救済措置はなくとも合格ラインだったので、別にこのままで合格率が低くても問題ない立場ではありましたが、そこでふと蜘蛛の糸の話を思い浮かべたわけです。
頑張ってきた人たちにもその1年間の熱意や背景があるわけで、必死になるのは当然です。
私も万一のとき、同じ密度で勉強して不確定要素の強い試験(社労士試験はかなり運要素も強い)に臨むというのもかなり厳しいとは感じておりました。
同じ試験を受けた知り合いはまったくいませんし、神に縋るような気持ちの人に友人もいません、いってしまえば無関係な人たちです。
とはいえ、合格に人数制限があるわけではないですし、同じ苦労をした人たちの苦労や気持ちを理解できないのもな、などと感じるところはありました。
結局のところ救済措置があり、昨年より合格率はアップしたようです。
別に何か直接的にいいことをしたわけではありませんが、蜘蛛の糸に続いて登ってくる無数の亡者を振り落としたカンダタとは違った気持ちで1月ほど過ごせたように思います。
十夜放生会にご参加いただく皆様も、ぜひ何か生きものに関する説話を思い浮かべてご参加いただければ、より良い法要になるかと存じますので、ぜひ御心に留めていただければと思います。
なお、私は来年、社労士として個人事務所を開業予定ですので、その件につきましては順次お知らせいたします。